TOHOシネマズ系列の映画館で行われている轟音上映だが、気になっているもののなかなか一歩踏み出せない方も多いのではないだろうか?
轟音上映とは、空気の振動を轟音として体験できる体験型サウンドシアターで上映される映画のことだ。
またIMAXのように追加料金を支払うことなく、より迫力ある音響で映画を鑑賞することができる。
あくまで爆音上映(爆音映画祭)とは異なるので、その点はご留意いただきたい。
▼轟音上映と爆音上映の違い
轟音上映 | 低音が振動やクリアな音として聞こえる音響装置を用いて映画を上映すること |
---|---|
爆音上映 | 音楽用の音響機器を用いて、大音量で映画を上映すること |
また今回調査した轟音上映体験者の中には、このような声も聞かれている。
「低音が響くとこは確かに凄い迫力があり、IMAXよりすごいと感じた」(25歳女性、グレイテスト・ショーマンを轟音上映で鑑賞)
しかし問題は、轟音上映の迫力がありすぎても困るという点だ。
つまり大きな音が苦手な方や、気の弱い方、初デートでミスれない状況などに轟音上映をチョイスして醜態をさらしてしまったり、せっかくの映画鑑賞なのに途中退席を余儀なくされては困る。
そこで本稿では轟音上映体験者28人を対象に、轟音上映の実態に迫りたいと思う。
早速だが、今回の調査結果をまとめるとこのような結論となった。
▼今回の調査の結論
・轟音上映の体験者によるおすすめ度は平均3.6点/5点
・轟音上映はうるさいわけではない
・轟音上映のリピート意向はやや低め
本稿を読み終わるころには、轟音上映に足を向ける勇気が湧き出ているはずだ。
以下、今回の調査結果をじっくりとご覧いただきたい。
轟音上映のおすすめ度は微妙な水準
ではまず轟音上映のおすすめ度から見ていくが、これがなんとも微妙な結果だった…。
轟音上映の体験者たちに、轟音上映のおすすめ度を聞いたところ、平均して5点満点中3.6点で、「ややおすすめできる」以上の評価をした人は60.7%だった。

また「ややおすすめできる」の評価をした人がもっとも多く50.0%を占めているところや、「あまりおすすめしない」以下の評価が1割程度に止まった。
こうした点に着目すると、轟音上映のおすすめ度は高いように見える。
だが一方で、こんなデータも取れてしまった。
下図は「轟音上映と通常上映を選べるなら、どちらのスタイルで映画を観るか?」を問うた結果だ。

轟音上映の体験者の60.7%が通常上映を選択しており、轟音上映をリピートしたい向きよりもやや上回る結果となった。
これらのことを総合的に考えると、「轟音上映は一度体験しておいても損はないが、一度経験したらもういい」という評価の人が多いことがわかる。
このなんとも言えない微妙な結果に、より轟音上映の底知れぬ恐怖を感じてしまう人もいるかもしれない。
一体轟音上映では、観客になにが起こったというのだろうか?
そこで轟音上映の実態をもう少し深掘りして見ていくことにしよう。
轟音上映は「うるさい」わけではない
まず「映画館の暗い空間の中で、大音量でガンガンこられたら怖くて泣き出してしまうかもしれない」という懸念をもっている人もいると思うが、その点は心配するには当たらない。
というのも、轟音上映はうるさいわけではないからだ。
今回調査した轟音上映の体験者に、「鉄橋の下にいるときに電車が通過したときの音量を100とするなら、轟音放送のうるささはどのレベルか?」を問うた。
すると「鉄橋を通過する電車の騒音よりかはうるさくない」と回答した人が71.4%を占め、聴覚上の音量はさほどでもないことがわかる。

もっとも多かったのは「50~74」のスコア、つまり鉄橋を通過する電車の音量の「1/2から3/4くらいの音量」と回答した人で、39.3%にも昇る。
一方で、鉄橋を通過する電車よりも「うるさい」と感じた人はわずか10.8%に止まった。
鉄橋を通過する電車の音量がピンとこない方は、同じ騒音レベルである「すぐ近くで吠えている犬の鳴き声」や、「カラオケの室内」の音量に耐えられるなら、轟音上映に参加してもまず大丈夫だ。
またこのことを裏付けるように、体験者に「大音量が苦手な人でも楽しめそうか?」を聞いたところ、「かなりそう思う」と「ややそう思う」を合わせた53.6%が同意している。

むろん大音量が苦手な人はあえて轟音上映を観に行こうとしないと思うが、轟音上映の聴覚上の音量はさほどでもないことがわかる。
つまりあなたが轟音上映を観に行っても、上映中に泣き出したり、途中退席を余儀なくされるような羽目に遭うリスクは低い。
となれば、一体なにが「轟音」なのだろうか?
辞書を引いてみると、轟音とは大きな音が鳴り響くことを指す。
事態は混迷を極めてきたので、実際の体験者の言葉を借りて、轟音上映の実態に迫ることにした。
轟音上映体験者の口コミ
この章では轟音上映体験者の実際の口コミを見ていくが、利用者たちの生の声に耳を傾ければ、轟音上映の実態や魅力が把握できる。
最初に口コミ全体の傾向をお伝えすると、轟音上映体験者の口コミにはこのような傾向があった。
▼轟音上映の口コミの傾向
・低音と振動がヤバい
・低音が聞き取りやすい
まず轟音上映の低音と振動からいくと、このような口コミだ。
スクリーン下から空気を震わせるような低音が響きます。
これにより、映画の音が「耳で聴く」だけでなく「身体で感じる」体験となり、和太鼓の演奏のように胸や腹に直接響く振動が楽しめます。(52歳男性、ONE PIECE FILM REDを轟音上映で鑑賞)
聴覚的に大きな音というよりは身体に振動が伝わり、映画の音を耳だけでなく全身で聞くような感覚でした。ただ、心臓の弱い人や怖がりな人にはお勧めしません。(24歳男性、名探偵コナン100万ドルの五稜星を轟音上映で鑑賞)
「音楽作品等、音を意識した作品については重低音等体全体に響く音声を楽しめるので、没入感・ライブ感が凄まじいなと思いました。
そのため、轟音上映のシアターのみ、最新映画だけでなく過去の音楽作品をローテーションでリバイバルしてほしいなと思います。(キネマ旬報シアターみたいに)」(27歳男性、僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46を轟音上映で鑑賞)
「低音が響くとこは確かに凄い迫力があり、IMAXよりすごいと感じた」(25歳女性、グレイテスト・ショーマンを轟音上映で鑑賞)
ライブやクラブに行くと、バスドラムやベースの「ドン!」という低音を振動として感じられるが、轟音上映では銃を撃つ音や、重いドアが閉まる音でその振動を味わえる。
簡単にいうと、映像の迫力が音響とあいまって増すということだ。
迫力が増すと見ている側の注意力が引きつけられ、映画により集中できるという効果がある。
また轟音上映の音の聞き取りやすさの口コミはこのようなものだ。
「うるさいというよりかは、はっきり聞こえるというような感じで、音鳴りというのがないという感じです。通常の映画館のスピーカーって、大きい音が出ると音が割れたりしたうえで、前に出力して出した音が空間内に残るような感じでピタッと音がやむということがなく、ブーンというような音が聞こえることがあるんです。そうしたことがないというのが轟音上映で大きな音から急に静寂になるというのがすごい技術だと感じました」(41歳男性、グラディエーターIIを轟音上映で鑑賞)
「ウルサイのかと思っていたけれども、実際には効果音が立体的にはっきり聴こえる程度で、コンサート会場ほどうるさい音ではなかった」(61歳女性、鬼滅の刃 無限列車編を轟音上映で鑑賞)
こうした低音がはっきり聞こえる理由には、轟音上映にはサブウーハーという機材が導入されていることが関係する。
サブウーハーというのは、通常のスピーカーのように高音から低音まで幅広い音域の音を出すものではなく、低音だけをクリアに再生する。
全方位型のスピーカーだと、同じ音量が出ていても中~高音が大きく聞こえ、低音が小さく聞こえるのだが、サブウーハーはそれを補う装置とイメージすれば間違いない。
少し以前に、少々ヤンチャそうな人たちが車にサブウーハーを積んで「ズンズン」いわせながら走っていたが、轟音放送で使われている装置もまさにそれだ。
もちろん通常の映画館にもサブウーハーは使われているのだが、轟音放送ではそのサブウーハーをアイソバリック方式という特殊な方法で設置されている。
つまりこれらの口コミを総合すると、轟音放送はうるさいわけではなく、低音が振動とともによりクリアに聞こえる上映会ということができる。
このほかの轟音上映に関する口コミをご覧になりたい場合は、こちらをタップしてください。
性別 | 年齢 | 鑑賞した映画 | 口コミ |
---|---|---|---|
男性 | 29 | サンダーボルツ | 目新しいと感じた。新鮮だった。 |
男性 | 52 | ONE PIECE FILM RED | スクリーン下から空気を震わせるような低音が響きます。これにより、映画の音が「耳で聴く」だけでなく「身体で感じる」体験となり、和太鼓の演奏のように胸や腹に直接響く振動が楽しめます・ |
男性 | 24 | 名探偵コナン 100万ドルの五稜星 | 聴覚的に大きな音というよりは身体に振動が伝わり、映画の音を耳だけでなく全身で聞くような感覚でした。 ただ、心臓の弱い人や怖がりな人にはお勧めしません。 |
男性 | 54 | サンダーボルツ | 臨場感があり、これまで以上に作品へ没入できました。 |
女性 | 25 | 名探偵コナン100万ドルの五稜星 | 思ったよりも不快な大音量ではなかった |
女性 | 41 | THE FIRST SLAM DUNK | 思ったよりも楽しかった |
男性 | 59 | 進撃の巨人 | 難聴気味の人と一緒に轟音上映を体験した。私にはうるさいと思ったりしたが難聴の人は聞こえたという |
女性 | 52 | 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 | 自分も見たかった作品を、友人のお付き合いで見ました。確かにもの凄い音でしたが、大好きな作品だったので、こんな音ではなく、もう少し心穏やかに見たかったです。 |
男性 | 50 | ブラックホークダウン | 迫力があります |
女性 | 42 | 竜とそばかすの姫 | 自分自身としては大きな音だけではなく、小さな音の繊細さにもこだわり、それをきちっと響かせる感じが魅力的だと思ったことです。 |
女性 | 20 | ハイキュー | 私は大きな音があまり気にならないので非常に良いと思ったが、大きな音が苦手な人は最後まで見られないのではとおもった。 |
男性 | 40 | サンダーボルツ* | 映画の本作に集中しにくいかも |
男性 | 31 | トワイライトウォーリアーズ | 終わった後耳がしばらく聞こえづらくなった |
女性 | 27 | 犬王 | 登場人物の歌唱シーンがよくある映画だったのでじっくり聞けて良かったと思います。ちょっとした効果音も大きくなっているのでジャンルによってはうるさくなってしまうかなと思いました。 |
男性 | 27 | 僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46 | 音楽作品等、音を意識した作品については重低音等体全体に響く音声を楽しめるので、没入感・ライブ感が凄まじいなと思いました。 そのため、轟音上映のシアターのみ、最新映画だけでなく過去の音楽作品をローテーションでリバイバルしてほしいなと思います。(キネマ旬報シアターみたいに) |
女性 | 25 | グレイテスト・ショーマン | 低音が響くとこは確かに凄い迫力があり、IMAXよりすごいと感じた。 |
男性 | 41 | グラディエーターII | うるさいというよりかは、はっきり聞こえるというような感じで、音鳴りというのがないという感じです。通常の映画館のスピーカーって、大きい音が出ると音が割れたりしたうえで、前に出力して出した音が空間内に残るような感じでピタッと音がやむということがなく、ブーンというような音が聞こえることがあるんです。そうしたことがないというのが轟音上映で大きな音から急に静寂になるというのがすごい技術だと感じました。 |
男性 | 60 | サンダーボルツ | 体感がめちゃくちゃ凄い |
女性 | 32 | ガールズ&パンツァー 劇場版 | 耳栓をしないと鼓膜が破れるかと錯覚した |
女性 | 24 | ARASHI Anniversary Tour 5x20FILM #”Record of Memories” | 想像していたものでは無かったなというのが一番です。通常の映画より迫力あるサウンドを体験できるように設計されているとなっていたので期待をしていたのですが、座席の前と下から地鳴りのような想定外の音が鳴り響く形です。ほとんどの曲は轟音によって歌声が飲み込まれてしまっていて、自分が期待していたものとは違いが多くとても残念でした。 |
男性 | 29 | ONE PIECE FILM RED | ワンピースの歌姫の声が良かったです。 |
男性 | 42 | 竜とそばかす姫 | 想像以上に迫力のある作品になっていました |
女性 | 34 | ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories” | 私は嵐が好きで、どんな形でも映像を通してまたあの状況が味わえるならと思い轟音上映を体験してみました。 いわゆる音がうるさいだけなのかと思いましたが、やはり好きも相まってか全く気にならなかったしリアルで楽しかったです。 |
女性 | 35 | 名探偵コナン 隻眼の残像 | 息子が体験したいというので行きましたが、音に敏感なところがあるので正直2時間はきつかったです。 |
女性 | 42 | グレイテストショーマン | そうでもなかった。 |
女性 | 61 | 鬼滅の刃 無限列車編 | ウルサイのかと思っていたけれども、実際には効果音が立体的にはっきり聴こえる程度で、コンサート会場ほどうるさい音ではなかった |
女性 | 34 | ガンダムSEED FREEDAM | 元々轟音がどんなものかよくわかってなかったのですごい覚悟して見に行きましたが、実際に見たらなんとなく、思ってたものとは少し違い、明らかに普通のものとの明らかな違いが私は分からなかった。 |
女性 | 37 | トップガン マーヴェリック | とても迫力があった |
轟音上映におすすめの映画は「アクション、戦争、SF」
さてここまでで轟音上映そのもののイメージはかなり明確になってきたと思うが、映画と言っても多岐にわたる。
つまり極限までセリフやBGMをそぎ落としたような巨匠の作品から、15分に1度は歌と踊りが入るインド映画までさまざまだ。
そこでどんなジャンルの映画が轟音放送とシナジーがあるか?を、体験者たちに聞いた結果が下図だ。

もっとも多かったのは「アクション映画」(28.6%)で、それに近い「戦争映画」(21.4%)もそれに続いた。
実際の体験者の声を借りると、このような理由からだ。
「爆発、カーチェイスなどのシーンは響いて楽しそう」(25歳女性)
「車やバイク等の金属音や銃撃戦、爆発などの音の響きだったりスピード感を楽しむものだとその世界観に入り込むことができてより楽しく映画が見れると思います」(24歳女性)
「戦場の臨場感が得られそうだから」(42歳男性)
要するに、このジャンルが轟音上映とシナジーがあると考えられるのは、爆発シーンや銃撃シーンがあるから、という理由だ。
なんともシンプルというか安易な発想に見えるかもしれないが、某漫画家は「爆発シーンがない映画は見ない」と豪語するほど、爆発シーンと映画は密接な関係性にある。
つまり爆発シーンは、物語の「はじまり」にあってもよし、主人公の華々しい登場シーンにもよし、少々中だるみしてきたところに一気に緊張感を高めるためにあってもよし、ようやく難敵を打ち倒したときに我々観客にカタルシスを与えるためにもあってもいいのだ。
そんな万能演出が爆破シーンである。
それを轟音上映だと衝撃波とともに見れるわけで、爆発シーン好きには思いもひとしおだ。
またアクション・戦争映画に次いで多かったのが、意外にもSF映画だった。
「SFって、不思議な音、日常にあり得ない音を出すことが多いんですが、よく聞こえないということがあり、ワープするときに出る音なんかを楽しめるので選びました」(41歳男性)
「武器が発射されたり、マシンが移動するようなシーンがサウンドとシンクロしてリアル感が増します」(54歳男性)
長い間動きを止めていた宇宙船が、数百年ぶりに低く重いエンジン音をうならせ、はるか銀河に旅立つシーンなど、轟音上映であればそれだけでご飯3杯はいけそうだ。
ちなみに選択肢に劇中歌が多いミュージカルや、アーティストのライブを含めていなかったが、体験者の中にはそうした映画を轟音上映で鑑賞した人も多く、選択肢があれば相当な割合になったものと思われる。
総じて轟音放送はアクションシーンと相性がいいと考えられ、そうしたシーンが多そうな映画をチョイスすることが轟音上映を楽しむコツと言える。
轟音上映を実施している映画館
さてここまで読んできて、轟音上映を体験したくなった方のために、実施している映画館をおさらいしておく。
轟音上映はTOHOシネマズ系列の映画館で実施されていて、轟音上映が鑑賞できる映画館は「轟音シアター」と呼ばれている。
ただし2025年7月現在では、すべてのTOHOシネマズが轟音上映に対応しているわけではなく、主に大都市の映画館のみに限られている。
以下、轟音上映で鑑賞できる映画館の一覧だ。
北海道 | TOHOシネマズすすきの |
---|---|
東京 | TOHOシネマズ池袋 |
TOHOシネマズ上野 | |
TOHOシネマズ立川立飛 | |
大阪 | TOHOシネマズなんば |
TOHOシネマズセブンパーク天美 | |
TOHOシネマズららぽーと門真 | |
福岡 | TOHOシネマズららぽーと福岡 |
これら以外の地域の方は、最寄りの轟音シアターに足を伸ばす必要があるが、気になる方はぜひ轟音上映を体験していただきたい。
まとめ
以上が轟音上映に関するレビューや評価を調査したレポートだ。
最後におさらいがてら本調査の結論をまとめておくと、このようなものになる。
▼今回の調査の結論
・轟音上映の体験者によるおすすめ度は平均3.6点/5点
・轟音上映はうるさいわけではない
・轟音上映のリピート意向はやや低め
映画館で映画を観る醍醐味のひとつに、いい音響で映画が観られるというメリットは間違いなくある。
今回の調査では、轟音上映のそうした音響面の迫力を好感する声が上回ったことは確かだ。
筆者もビビりなので轟音上映と聞くと足がすくんでしまったクチだが、この記事を読んで轟音上映に挑戦する勇気を得た方は、ぜひ足を運んでいただきたい。
コメント